御畳調進司が密かに教える「良い畳店の選び方」
せっかく当店のホームページをご覧頂きましても、畳屋という性格上残念ながら自店の営業エリア内のお客様にしか当店の畳をご使用いいただけないのです。地元の畳屋さんにお願いしても手に入らないような場合は出張も伺わせていただきますが、出張費が加算されますので、見合うような商品でないとお客様の方も嬉しくないですよね。 ということで、当店の畳がお届けできない全国の多くのお客様に、当店が良い畳店を見極めるコツをお教えいたしましょう。 畳屋さんには絶対ナイショにして下さいね。
最近は畳の表替えの安売りチラシをよく見かけますが、こういった所はまず第一に避けて下さい。
チラシ業者の場合は、「わざと低級な見本品を持参して高い商品にシフトする」「縁代は別途加算」「配達代は含まれているが引き取り代は含んでいない」「引き上げてから表替えは出来ないからといって新畳に変更さす」「キャンセルすると表替え代よりも高いキャンセル料を要求する」「見積もりを頼んだだけなのに無理に畳を持って帰った」「人相の悪いオジサンが後ろに無言で立っていて断れないようにしむけられた」などと何かしら言って価格をつり上げるようです。
消費者相談所や畳組合にもトラブルに対しての相談があとを絶ちません。
結局、畳店で7000円くらいの品質の表替えを9500円くらいで売りつけられたりしてかえって高くなる上に、気分も害さなくてはならないようです。
ホームセンターでも畳の機械を設置して表替えを引き受けているところがあります。畳のこともろくに知らない兄ちゃんが少し囓っただけでの門前の小僧で仕事をします。いっぱしのことを言いますが、中身は素人ですのでムチャクチャな仕事をされてしまいます。価格表示に「持ち込みの場合は割引します」と謳っていたりしますが、現場も見ずに仕事をするということは、隙間の補正もしないようなひどい仕事をすると保証しているようなものです。
店舗を構えるということは、逃げも隠れもしませんし、世間に対して後ろめたいことをしないと主張しているということなのです。信用のまず第一歩ですね。電話帳などの広告で店を探しても、ご注文の前にどんな店か下見に行くようにしましょう。
下見に行った時に店舗や仕事場の整理や掃除の行き届きを観察してみましょう。綺麗に手が行き届いていない店は、仕事に対しても行き届かないと言うことです。こういった店は入らずに素通りしましょう。
もう一つ、仕事場の中に木製の作業台があるかチェックしましょう。この木製の作業台は畳を手で縫うときに使います。今はほとんどの畳屋さんが機械で畳を縫いますが、この作業台を持っているということは、手で縫う技術も持っているということになります。手縫いで畳を作る基本を知っているのと、機械でしか縫えないのとでは根本的に技術が違いますし、仕上がりも違うのです。
整理が行き届き作業台も置いている店を見つけ、ここならと思ったなら思い切って値段を聞いてみましょう。「畳の表替えはいくらしますか?」と聞いてみて下さい。明確に「○○○円です」と返答されたらこの店はやめましょう。なぜなら、畳の種類は限りなくあるにもかかわらず1種類しか応えないということは店の都合で売っているからです。このような考えではお客様の側に立って親身に相談に乗ってもらえるとは思えないからです。
「畳と一口に言ってもいろんなグレードがあるんですよ。低価格〜高価格まで○ランクもあります。お客様のお家の畳を見せて戴かなくては現在どのような畳をお使いかわかりませんが…。当店でお勧めさせて戴いているのは○○○円くらいが中心です」と受け応えが返ってきたら希望ありです。
受け返答は合格です。確かに見て貰わないことには自分の家でどのような畳を使っているかは分からないですよね。でもまだ家には呼ばないで下さいね。
次に、畳表のグレードの違いの説明を聞いてみましょう。「ではサンプルを上から下まで見せてください」とおねだりしてみましょう。この時に店主が出してきたサンプルが5種類以下だったり髭を落とした表(髭のことは後で記述します)を出してきたらここでパスです。
6種類以上出てきたら「畳表って見た目は全て同じに見えますが何処がどう違うんですか?」と質問を続けましょう。「まず経糸が違います。こちら○点は綿糸ですから表が薄っぺらいでしょ。こちら○点は麻糸ですからしっかりした表になります。つぎに産地ですね。中国製や国産品で値段が違いますね。昔から備後表が高級品でしたが今はほとんど無くなり熊本産が主流ですね。あと草の長さでも値段が違いますよ。こちらの表は長い藺草を使ってますがこちらは短いでしょう」
まあ、ここまで説明されたら畳店としては一応合格ラインです。
さらに、サンプルが実際に必要量手持ちがあるのかもそれとなくチェックしておきましょう。多くの畳屋は注文を受けてから材料を仕入れるのです。そうすると同じグレードでも当然品質の違う物がやってくることになります。
「マンション住まいの友人の畳はすだれのような黒い筋が全面に出ていて汚いんです。お屋敷にお住まいの友人の畳は黒い筋が無く全面が均質なのですが、どう違うんでしょう?」とさらに突っ込んで質問してみましょう。「値段の違いですよ」とか「グレードの違いですよ」との説明じゃ当たり前でもの足りないですよね。ここで「草質と藺草のより分けが違うんですよ」と説明されたら、じゃあ実際にサンプルで説明して貰いましょう。サンプルの髭の部分を指して一本一本明確に黒筋の原因を指摘されたらこの畳屋さんはたいへん素晴らしい畳屋さんです。髭のない表を使っているような人は黒筋や堅牢さの見極めも方も知らない人なんです。
このような素晴らしい畳屋さんに巡り会ったなら、是非お招きしてご自分の家の畳を見て戴きましょう。そして、現在使用中の畳がどのような物なのか丁寧に教えて戴きましょう。そして、見せて戴いたサンプルの中からどのグレードがご自分の家に相応しいかを相談して双方納得してから発注いたしましょう。
この時に、畳床や、お手入れ方法の説明も聞いておくと良いでしょう。発注価格、施工日、家具の移動などもよく打ち合わせをして下さいね。
このような素晴らしい畳屋さんはそう簡単に見つかるものではありません。幸運にも巡り会ったなら大切にして末永いお付き合いをさせて戴くようにしましょう。お互い信頼が構築できたなら、次回からは回りくどいこともせずに電話一本で気軽に来ていただけるようにしましょうね。
間違っても値段だけで店を決めるような発注をしたり、商品説明や下見にも来ないような畳屋さんと付き合ったりしないように、いま一度忠告させていただきます。