畳へのこだわり
其の一、イ草の産地にこだわります。
其の二、経糸にこだわります。
其の三、イ草の長さにこだわります。
其の四、見映えにこだわります。
其の五、イ草の質にこだわります。
其ノ一 〜イ草の産地にこだわります〜
畳表のグレードは主に生産地で分けられます。
日本にはいくつかのイ草の生産地がありますが、その中でも最高級とされているのが広島産のイ草で織られた畳表です。
広島(備後表)
現在では生産農家の数も10戸余りであり、大変貴重となっています。
細くて硬く光沢に優れているのが特徴です。
広島県で生産したイ草を用いて広島で織った「備後本口表」、
他県で生産したイ草を用いて広島で織った「備後織表」、
他県で生産したイ草を他県で織って備後の人が仕上げた「備後表」があります。
ちょっと複雑ですよね。
岡山(備前表)
かつては日本では最大のイ草の産地とされていました。
現在は2戸の農家が栽培しているだけとなりました。
イ草はやや太めですが、草質にムラが少なく均一に退色するのでヤケムラが大変少ないのが特徴です。
熊本(熊本表・八代表)
現在、日本でもっともイ草を生産している地域です。
熊本県産のイ草は実に国産イ草の85%を占めています。
福岡(福岡表)
全国第2位の生産地で、全国生産の10%をしめます。太めでやや軟らかい草質ですが、均一性に優れているのが特徴です。日焼け時の草ムラが出にくい特徴があります。
大分県(琉球表)
断面が三角状(普通のイ草は断面が丸)になっている特殊な「七島イ草」で織られた高級畳表です。しなやかな草質ですので縁無し畳を作ることができ、独特なざんぐりとした見た目も好まれます。
中華人民共和国・寧波(ニンポー表)
現在、日本国内で使用されている畳製品の70%が中国浙江省の寧波でイ草が作られています。
近年の畳は特に国産品と指定しなければ全てといって良いほど中国産が使用されるようになってきました。
近年は品質の低下が著しく、耐久性が悪くすぐに擦り切れるようになってきました。
中華人民共和国・四川(四川表)
近年、中国でもイ草産地が移動し、四川省の眉山で良質のイ草が栽培されるようになってきました。中国表の内の10%が四川産の表となってきました。
四川表は耐久性が良くて良質なイ草です。
其ノ二 〜経糸にこだわります〜
経(タテ)糸には麻糸と綿糸があり、それぞれタテの引っ張り強さに違いがあります。綿糸、綿糸+綿糸、麻糸、麻糸+綿糸、麻糸+麻糸の5通りに組み合わせて使用します。
麻糸の方が太くて強く、イ草をたくさん織り込めるという特性があります。このため、麻糸と綿糸の組み合わせを用いると肉厚でイ草の密度が高く、畳表の山が揃って溝が深くハリのある美しい畳表を作ることができるので、特に高級品に使われます。
其ノ三 〜イ草の長さにこだわります〜
畳はだいたいの横幅が決まっているのに対し、イ草は植物ですので一本一本で長さが異なります。
またイ草は根元部分が白く、先の部分が少し赤みを帯びているため、畳表に使用される部分は真ん中の良質の部分のみとなります。使用するイ草が長ければ長いほど色ムラの少ない美しい畳表に仕上がりますが、逆に短いイ草を使用すると、畳の両端に赤みや白みが混ざってしまいます。
イ草の長さは新しい畳表の色味だけに影響するのではなく、イ草は青い部分が一番強度があるため、畳表の強さにも関係してきます。また、長さの揃ったイ草を使用すると、畳表の青色が退色していく際に、色ムラも少なく美しく変化していく様子をお楽しみいただけます。
其ノ四 〜見映えにこだわります〜
イ草の産地や長さ、経糸にこだわって作られた畳表。それを使って作られた畳は、必然的に見映えも美しく仕上がります。
・産地によりイ草の色みやツヤが異なります。
・適した組み合わせの経糸を用いることで、畳表にハリがでます。
・イ草の長さにこだわることで、色ムラの少ない美しい畳表に仕上がります。
・さらに見た目の上品感、風合いを見極めます。
・い草の粒ぞろいにこだわることで、織面がなめらかに仕上がります。
もちろん、イ草ひとつにしてもその年の気候などにも影響されますので、どの組み合わせが最高というわけではなく、そのときそのときで最高の組み合わせを見極めることが大切です。
其ノ五 〜イ草の質にこだわります〜
いくら畳作りの技術が優れていても、その材料となるイ草も良いものを使わなくては意味がありません。また、使用しているイ草の草質に差があれば、同じランクの畳表の中でも品質に差が出てくることになります。このため、同じランクの畳表で比較した際に「安いから」と購入したものが、概ね使用しているイ草の草質の悪いものだったということになるのです。
当店ではどのランクの畳表でも、そのランクのうちで最高品質のイ草の畳表を使用しています。
また、京間用の畳表と関東間用の畳表では、同じランクの畳表でもその材質は根本的に違います。何故なら、関東間用の畳表は京間用のイ草をとった残りで作られるからです。つまり京間よりランク下の草が使われるからなのです。
当店の翠鳳・雅シリーズの価格が京間と関東間で同じなのは、材質の低下を防ぐため関東間の畳も京間用の材料を使用するからです。
さらに、イ草は植物ですので同じ産地の中でも良し悪しがあるため、最高級産地の広島産のイ草の全てが最高と言いきれるわけではありません。他県にて独自の方法でイ草を栽培している農家の中には、良質な畳表を作っておられるところもあります。また、イ草は植物なので気候等にも左右されることがあります。これらに関しては、直接現地に足を運んで見定めたり、信頼できこだわってくれる流通業者に集めていただいたりし、一品一品目で見て選び抜いております。
強さも美しさも、また手触りや風合い、退色の仕方にいたるまで、全てを左右するのはイ草の質の良さです。当店では産地・農家に直接足を運んで良質なイ草・畳表を見定めており、さらに確かな技術で、強く美しく、長くお使い頂ける畳表をお届けできるよう努めております。