製品のご紹介 翠鳳シリーズ
畳の価格はこうして決まる
畳の価格は、材料費と手間(工賃)と営業経費と消費税を合計して積算されます。
材料費は、大きく分けて、畳床(タタミドコ)、畳表(タタミオモテ)、畳縁(タタミベリ)、副資材(糸、付け藁、框補強材、縁下紙など)の合計となります。材質・グレードにより様々な価格となります。材料屋さんに支払われます。
手間(工賃)は、採寸手間、製作手間、納品手間にわかれます。さらに手間の中に色々なレベルの工法があり、工法により様々な金額が計算されます。たとえば1日あたりに製作できる枚数は工法により異なりますので、最高0.5枚/日〜最低15枚/日となります。したがって手間にも様々な価格が生まれます。採寸手間、納品手間についても同様で欲求されるレベルに合わせて必要とされる時間が異なりますので様々な価格となります。これらの手間は職人に支払われます。
営業経費は、店を維持していくためにかかる経費のことで、材料費と手間を加算した原価に20%程度を加算いた金額が提示されます。
最後に、消費税が加算された金額がお客様に請求されるわけです。
高い店と安い店どちらを選ぶ?
二軒の畳店で見積もりを取ったところ価格に大きな差がありました。何故こんなに価格が違うんでしょう?またどちらのお店にお願いするのがよいのでしょうか?
まず、同じ材質でお見積もりを取りましたか?材質が違えば当然価格が異なります。材質が分からないときは現在使用中の畳を見ていただいて「これと同じ物で」と指定するのも一案です。
次に、同じ材質でも工法のレベルを落とすと価格も下がります。したがって複数の畳店で同じ材料で見積もりしているにもかかわらず価格に大差が出た場合、「きちんとした工法で適正な価格を出しているから高い」か「手抜き工法をしているから安い」のどちらかになります。でも工法なんてお客様では分からないですよね。
ではどう判断するか… 最終的には、お客様が畳に求めておられる要求度で決断するしか有りません。お客様がきちっとした仕事の畳をお求めの場合、つまり畳に対しての愛着ある場合は高い店の方が無難です。お客様が畳ならば何でも良いとお考えなら安いお店を選択されれば良いと思います。
良いものを安く買いたいのが消費者の心情ですよね。一流メーカーの大量生産品ならば安い店で買っても品質に違いはありません。しかし、少量生産品は同一条件品ではありませんから一概に比較することは出来ないのです。ですから価格=品質であると考えてまず間違いありません。買う商品に対して知識や見る目が備わっていない場合は、高いお店を選択する方が無難だと思います。
良くある勘違い「職人の手間」のこと
職人と消費者の会話で良くある勘違いの事例です。
お客様が仕事を依頼する際に、見積書を取り請負価格を決めて仕事を発注致します。やがて作業が進行するにつれて「もっと良くしたい」とか「こうした方が良い」とか思いはじめるのは、お客様に限らず職人も持つ当然の気持ちです。そこでお客様から「こういうふうに出来ないか?」とかの相談を投げ掛けるんですが、この時にたいていの職人はこう返答してきます「そりゃ、手間かかるで!」
この返答にお客様はよく「手数が掛かるから面倒くさくて愚痴を零している」とだけ受け取ってしまいます。「請負金額は最初に約束していて決まっているのだから、面倒な手数が掛かった分だけ面白くないよね。」と心の中では思いつつサービスして引き受けてくれたと解釈して「お願いします」と応えてしまいます。
ところがです、いざ仕事が完了し請求書が届くと当初の取り決めた金額より多い請求額が届きました。「なんで?」思い明細をよく見ると変更した部分が追加請求されています。思わず「詐欺じゃない!」とか「騙された!」とか感じ、「口論」や「トラブル」になったり「取り敢えず支払ったもののスッキリせずに他で愚痴を零したり」とか後味の悪い結果となることがよくあります。
ここでよく思い出してください。職人の方は「そりゃ、手間かかるで!」と言っているのです。手間とは工賃のことですから「工賃に追加が発生しますよ」とちゃんとお客さんに確認をしているわけです。
整理してみます。「職の世界の手間とは賃金のことである」「職人とは仕事をするのが精一杯なゆえ口べたである」ということを覚えましょう。したがって変更が有る場合にはハッキリと「追加は発生しますか?」と確認するようにいたしましょう。尋ね難いとは思いますが確認された方が職人の方も安心して仕事が出来るのです。
ちなみに職人というのは性格上「良い仕事をしたいがために請けた金額以上に追加が出ても少々のことなら自腹でやってしまう」ものなんです。「精一杯良い仕事を提供したい」「余分な追加はなるべく言い出さない」というものです。もし職人の方から手間の追加を言い出したらこの場合は自腹で補えないほどの大出血になっているということなんですよ。
もし、お客様の目から見て明らかに見積もり以上の仕事をしているにも係わらず追加も言い出さずに自腹で処理しているとお感じの場合はお心付け(チップ)を差し上げるようにされると良いと思います。職人というのは単純なもので、追加請求も遠慮した上にさらに良い仕事で返してくれる場合も良くあるのです。
ちなみに畳屋の場合は、商品価格1枚○○○円というのが普通ですので、こういうトラブルはめったに起こりませんのでご安心下さい。
嘆かわしい!畳表のJAS規格
畳表にJAS規格(日本農林規格)というのがあります。畳表は農産物ですからJISではなくJASになります。畳表のJAS規格は、麻引き表が特等・1等・2等の3種類、糸引き表が1等・2等・3等の3種類となっています。畳表の種類は沢山あるのに、JAS表にはたった6種類しか分類がないんですよ。その上規格の中心が普及品側に大幅に片寄っていて生産者側の都合に合わせた規格となってます。
私の住んでいる京都では、麻引き特等品が町家の居間に使う標準品です。座敷ならもっと上を使用しますし、子供部屋などは綿糸表1等を使います。消費者のことを考えるならもっとレベルが上がるはずです。畳表のJAS規格はいかに低シフトしているかがおわかり頂けると思います。ですから良識ある畳店ではJAS表は使用しないんです。
※畳表のJAS規格は平成18年3月現在改正に向けて協議が続けられております。が、改正原案でも相変わらず低シフト化がみられ残念でなりません。
ホントは畳表は麻引きだった
広辞苑で畳表とひくと「【たたみ‐おもて畳表】畳の表に使うイグサの茎を麻糸で織ったむしろ。」とあります。そうなんですよ、本来の畳表の経糸は粗苧(あらそう)といい麻を績む(うむ)で作りました。その後は黄麻やマニラ麻などの麻糸が主体でした。明治末期になって綿糸も使用するようになって、現在では綿糸の方が圧倒するようになっています。でも本当に畳の良さを味わうなら最低でも麻引き表は使用したいところです。
存在しないJIS畳
畳にも一応「JIS規格」があります。といっても規格があるだけで「JIS畳」というものはありません。規格というのは仕様のことであってあくまでも書面上のものです。この規格に沿った工程を管理する工場を造り認可をもらって初めて「JIS畳」と表示ができるのですが、残念ながら日本にはこの認可を得ている畳工場は1カ所もありません。したがって、現在市場に出ているJIS畳は「JIS規格を踏襲した畳」ということになります。
畳屋というのは90%以上の事業所が、家族だけで経営する家内工業なのです。割と大きなお店でも10名を数えるところはそう多くはありません。したがって、畳を作る以外に品質管理や品質検査、品質記録などの事務面を主体としているJIS認定工場の運営はできないのが実情です。
何でもかんでも規格の枠内に嵌め込もうとするお役所の発想の方に無理があるようです。
かといって、異業種からの参入で、安価で規格以下の粗悪品が大量に出回っていて、何も知らない消費者にしわ寄せが行っているのも現実です。お客様も賢くなって畳組合などに加入している信用おける店を選択され、自己防衛策をこうじるようにいたしましょうね。
組合加盟店はなぜ信用できる
畳屋の広告によく組合加盟店と謳っています。また畳組合の広告などにも「御用命は安心できる○○組合加盟店へ」などと書いてあるのをよく見かけます。先日、20代のお客様と話していた時のことです「組合て良く書かれていますが何故ですか?私等には組合にどういう安心感があるのかわかりません」とおっしゃっていました。なるほど、今の人達は安心な時代に育っておられるから「騙された」とかの体験もないし「疑う」という心もないのですね。
社会的企業は別として、普通個人の取引は全て自己責任が原則です。結果、損をしたり騙されたりすることも多々あります。特に零細企業は、信用あるお店から詐欺まがいのお店まで入り乱れているのが実情です。そんな中、信用を構築し世間にアピールすることは並大抵の努力ではできません。
組合というのは、業界の内部事情に最も精通しており、個々の加盟店の実情もよく把握しています。もし、加盟店に反社会的な行為があれば、組合を除名することにより自浄能力が働いているのです。ですから、組合に加盟出来ているということは「安心で信用できる店」とのお墨付きを頂いていることになるわけです。
畳職人の欠点
職人とは大変視野の狭い人種です。「良い仕事をしたい!」との立派な考えから技能向上には闇雲に情熱を傾けます。ところが、技能を向上することだけに一生懸命になり、いつの間にかそれ以外のことが関心の対象から外れてしまいます。人付き合いも町内会とか自治会とかの身近な人に限定されてきて社会的常識も狭くなります。情報にも疎くなり自分が使用する畳の材料の現状すらほとんど知りません。数十年前の修行時代に覚えた知識からほとんど進化していないのです。唯一の情報源が材料屋さんの話です。材料屋さんにとって都合の良い話を鵜呑みにするだけですから、悪い材料でも心底良い品だと思いこんで使っていることも多々あります。また噂話も裏付けも取らずに鵜呑みにするほどの低次元さです。
やがて普通の会話が出来なくなり世間の人との常識ある話もできなくなって、言葉使いも粗雑になってきます。とても変人になっているのですが当人は気がついていません。世間の人は一枚上手で、やがて「職人さん」と持ち上げて呼ぶようになります。「バカと鋏は使いよう」というわけです。
店を持っている畳屋でも、一人でやっている店の中には、このような職人のままの人が結構よくあるものです。
畳屋の実状
畳屋に必要な要素とは大きく分けて、畳製作、資材の知識、接客マナーの三点です。各々均等に大切な要素で、お客様に満足して頂き社会に貢献できる畳作りに日夜研鑽を重ねています。
どんな会社でも、製作担当と営業担当に分かれていますよね。なぜなら、両者は正反対の仕事で兼務は難しいからです。ところが、ほとんどの畳屋の場合家族1〜2名で切り回すので製作以外に手を回す余裕がありません。ですから、畳は作れるものの材料の知識も乏しいし新しい商品を勉強する暇もありません。まして、接客マナーなど出来る筈もありません。
何人もいる店に行くとこんなことはありませんよ。
3ちゃん家業
3ちゃん家業(工業)ていう言葉てご存じでしょうか?とうちゃん、かあちゃん、にいちゃんまたはじいちゃんなどの家族でする仕事のことです。畳屋は全国に15000軒あると言われていますが、なんとその90%以上の畳店が3ちゃん家業なのが実状なのです。
畳は安い?
畳は高い!とよく言われます。単純に単価だけをみると数千円〜数万円と結構な価格です。この価格帯を見てまだ利益が上がると判断して異業種から新規参入してこられるケースが稀に見られます。今までに、デパート、建売会社、ハウスメーカー、スーパー業界、最近では、ホームセンターや旅行会社、ガス会社も参入してきます。しかし、必ず数年の内に撤退していかれます。どうしてでしょうか?実は数量が売れる商品ではありませんからトータルすると儲からないからなんです。
大きな会社が販売した場合必ず2〜3倍の価格を設定します。たとえば、従来の畳店で作った畳が10000円だったとすると、大きな会社では20000〜30000円となります。同じ原価の物を正当な経費や販売手数料を載せて計算すると確かにこの販売価格になってしまうんです。でもこれじゃ消費者は買いませんよね。で売れずに撤退していくわけです。また、畳店と同じ価格帯で販売すると経費分赤字となりやはり維持できなくなります。
畳店はいかに薄利で安くお客様に提供しているかよくお分かり頂けたかと思います。
畳は高い?
畳は高い!とりあえず何でも高いという!消費者がいつも使う言葉です。もう聞き飽きました(笑)
じゃあ検証してみましょう。10500円の表替えを1室で6枚替えました。合計63000円です。ではお客様はこの畳を何年ご使用になられますか?とりあえず「7年」ご使用されたとしましょう。63000円÷7年÷365日で計算しますと、1日あたり約25円ということになります。25円では日々消費されるコーヒー代やたばこ代、お酒代、バス代、電気代などと比較しても随分とお安い金額となりますよね。よく考えると畳はとっても安いんですよ。
安い畳はこうなる
畳というのは不思議な商品で、高級品から安物まで一見同じように仕上がります。品位や味わい、使用感などで品質が見極められますので、デザインや色柄など目先の変化で区別することに慣れてしまった現代人にとっては、とてもわかりにくい商品のようです。
では、安い畳を使うとどういう欠点があるのでしょうか?
1.すぐにイ草が擦り切れて粉が出てきます。早い物では半年くらいで表面の皮がなくなります。
2.不揃いのい草の混入率が高くなり見映えが悪くなります。
3.い草が均質でないので焼けたときに黒スジが多く現れすだれとかバーコードの模様が出て汚く見えます。
難点が露呈したときには、お客様は安物を買ったことは忘れてしまい、結果、畳はすぐに傷むとか汚いとかの悪印象だけが残り、畳そのものを不要と考えるようになってきます。
下宿荘とかの短期賃貸し物件や、納戸の中敷きとかの割り切ることの出来る場所以外では安物はご使用にならないようにするのが賢明です。
どこにもいない畳の専門家???
国土交通省は建築工事共通仕様書などを作り各地の設計業者や自治体や建設業者に使用を推奨しています。その中にはA種からD種までの4種類の畳の仕様を設けています。採用されてる畳表はA種のみJAS1等麻引表でB〜D種まではJAS2等綿糸引表と指定しています。
JAS1等麻引表でもかなりレベルが低いんですが、実際の運用では、地方自治体や建設会社のほとんど全てがJAS2等綿糸引表を選択しています。これは設計事務所や建設会社に畳の知識がある人がおらず選択が不明なため他所の実績を右に習えしているからです。したがって、個人住宅であれ大邸宅であれ公営住宅用の普及畳表であるJAS2等綿糸引表が使われてしまうのです。
国土交通省の工事でのことです。伝統的建造物でしたので板入れ畳に長引き表という高級な畳を納めたことがあります。間に入った工務店は伝統建築をよく知る会社でしたので「ちゃんとした畳を入れよう!」と建物に合った品質を選択されたのです。ところが、竣工検査の時になってこの畳は共通仕様書のどれに該当するか追求されたんですね。もっと上だと説明しても規格に当て嵌まらないとなかなか納得してもらえず困りました。自分は建築の専門家だと自負しているだけにやっかいです。畳の知識のある建築関係者なんていないんですから、分からない時は素直に畳屋に教えを請えば良いのにね。
正しい畳縁の選び方
畳の縁には、多種多様いろいろな物がございます。その数は業界人でも把握できないほどで数千種にも及ぶかと思われます。正直なところ私も把握できておりません。
「どんな柄が合うかしら?」お客様にとって縁選びは楽しみでもあり迷うところでもあります。それでよく「プロのご意見を聞きたいんですが?」と尋ねられます。その時は必ずこう返答いたします。「だいたい無地が高級品で柄物が安物ですね」お客様の反応はたいてい「え?無地の方が高級なんですか?」と返ってきます。「はい、無地の方は綿ですから高級品でして、柄の方は化繊で安物なんですよ」
畳の持ち味の一つに「触感」があります。触ったときに「肌触りがよい」とか「暖かみを感じる」とか「安らぎを感じる」とかですね。いわゆる質感が良いということが畳が持つ特性であり好まれる理由の一つです。これはい草が自然素材がゆえに得ることができる最大のメリットです。畳縁を化繊にした場合、畳表の触感を楽しんでいった指先が化繊縁に触れたとき、違和感を感じせっかくの好質感が台無しに感じてしまいます。ですから、畳縁も天然素材を用いて畳表の特徴を最大限引き出してこそ畳の価値も上がるというものです。
畳縁の選び方は「材質で決める」というのが古くからの考え方です。ご使用先の品位に合わせて絹、麻、綿、化繊の順に使い分けるようにいたします。ただし、高級品ほど耐久性も良くないということも正直に申し上げておかなくてはなりません。
絹、麻縁には柄物はありません。綿縁にはごく少数ですが柄物もございます。化繊縁は柄物がメインで少数の無地物ものございます。 品位や質感を選ばれるか、見た目の柄を優先されるかは、最終的にはお客様のお好みということになります。